この「青磁陽刻大根文五寸皿」は、1750年前後の中期鍋島を代表する気品と静けさを湛えた美しい器です。まず目を惹くのは、青磁釉の澄んだ色合いと、しっとりとした光沢です。やや青みを帯びた釉薬は、器全体をやさしく包み込み、光の加減によって繊細な陰影を生み出します。この静謐な色調は、ただ視覚的な美しさにとどまらず、器そのものに格調ある佇まいを与えています。 　皿の中心には、陽刻によって浮かび上がる大根の文様が施されています。この技法は、器の表面に模様を柔らかく浮き立たせることで、絵付とは異なる立体的な表現を可能にします。大根の文様は、古来より「根が深く、育ちがよい」ことから、健康や家運の隆盛、子孫繁栄を願う縁起の良い題材として好まれてきました。形を写すだけでなく、そこに込められた意味や想いが、器に静かな物語性を加えています。 　五寸というサイズもまた、この皿の魅力を際立たせています。直径約15センチというこの大きさは、取り皿や盛皿として日常の中でも扱いやすく、特に茶懐石などの格式ある席でも活躍できる、程よい存在感を持っています。控えめでありながら、料理や空間を引き立てる力を秘めています。 　中期鍋島の特徴として、絵付を抑え、釉薬の質感や器の形そのものの美しさを重視する傾向があります。この皿もその流れを体現しており、華やかさよりも、使い手の心にそっと寄り添うような美を大切にしています。青磁の静けさ、陽刻の繊細な表現、縁起の良い文様、そして使いやすさ。この一枚の皿には、当時の職人たちの高度な技術と、ものづくりへの深い精神性が宿っているのです。 ★寸法★ 直径約15㎝ 高さ約4㎝ 陶磁器の町、佐賀県伊万里市在住で古物商（第911100009525）を営んでおります「陶磁器ヨーソロー」と申します。 古伊万里、現代作家もの、個人で製作活動しているレアな窯元、有田焼伊万里焼の陶磁器を中心に出品しております。 未使用品に関しては陶磁器商社、骨董に関しては古物競りやコレクター依頼品でございますので、ご安心くださいませ。